講座詳細

アニメーション文化講座 表現の追求 “手描きのアニメーション美術”

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講座趣旨

三鷹の森ジブリ美術館協力
第8回アニメーション文化講座
表現の追求“手描きのアニメーション美術”

 アニメーション作品においては、キャラクターを取り巻く世界を作り出すために美術スタッフが大きな役割を担い、その仕事ぶりが作品のクオリティを決めると言っても過言ではないでしょう。
 日本では1932年に、動画と背景が明確に分かれた全編セルロイドを使用した作品が制作され、美術はキャラクターが躍動する舞台装置の作り手として本格的に歩み出します。初期は演劇の書割のような単純なものでしたが、次々と作品が制作されるにつれ、表現と技法を掘り下げていったのです。
 現在では、作画や仕上、撮影などのセクションと同じように、美術もデジタル化が進み、ほとんどが絵の具からコンピューター上での作画に替わりました。ただ、美術スタッフが設定や描き方を考え、膨大なボードと呼ばれるイメージ画を描き、試行錯誤の末作り上げるのは、セル・アニメーションの時代からなんら変わっていません。これらの作業は、日本のアニメーション美術が積み重ねてきた基礎の上に成り立っているからです。
 今回の講座では、心に残る数多くの作品の美術監督を務めてきた小林七郎氏をはじめ、アニメーション関係者の取材を重ねて書籍や画集の数々を監修した野崎透氏、西洋と日本の近代・現代美術を研究してきた東京国立近代美術館主任研究員の鈴木勝雄氏をお迎えして、各専門の方々の視点から、日本のアニメーション美術を紐解いてみたいと思います。

講座概要

講座日程 2020年 1月14日 (火)
 〜2020年 2月 4日 (火)
時間 下記をご確認ください。
定員 50 人 (先着制)
回数 4回 通し受講のみ
受講料 一     般 3,000 円
市     民 2,400 円
市民在勤・在学 2,400 円
市 民 学 生 1,800 円
会     員 1,500 円
難易度 ★★☆
会 場 下記をご確認ください。
受付期間 12月3日(火)午前9時30分より

※スクロールしてご確認ください→

日程 開催時間 会場 担当講師 内容
第1回
1月14日
19時00分〜20時30分 三鷹ネットワーク大学 伊藤 望 日本のアニメーション美術 〜はじまりから今まで〜
 アニメーションの美術は、背景画だけでも一つの作品として完結していると思われがちですが、実際には動画とのバランスの中で制作されています。日本のアニメーションの黎明期から、今ある多種多様な表現が生み出されるまで、背景画はどのように考えられ、描かれてきたのでしょうか?美術を担った方々のお話をご紹介しつつ、美術が果たしてきた大きな役割とその劇的な変化をたどっていきます。
第2回
1月21日
19時00分〜20時30分 三鷹ネットワーク大学 小林 七郎 アニメーション美術の第一人者・小林七郎がいまのアニメに物申す!
 多かれ少なかれアニメに親しんできた人で、小林七郎さんの背景美術を一度も目にしたことがないという人はおそらくひとりもいないのではないでしょうか。多数の作品の美術を手掛けてきた講師の足跡をたどることは、そのままアニメーション美術の歴史をたどることと同義と云えるでしょう。小林さんの原点、小林プロの理念、出崎統さんとの出会い、そして描き手たちが心のままに描き、新たな表現を発見する可能性、絵を描くという行為の素朴な楽しさについて語っていただきます。
第3回
1月28日
19時00分〜20時30分 三鷹ネットワーク大学 野崎 透 登場人物の心情を表現する背景
 「アルプスの少女ハイジ」や「赤毛のアン」の美術監督である故・井岡雅宏氏はそれまで単なる書割に過ぎなかったアニメーションの背景を喜びや悲しみといった登場人物の心情までをも伝える“表現”へと昇華させました。そうした革新はどうして可能となったのか?高畑勲監督や宮崎駿監督らへの過去の取材、そして井岡氏が描いた美術や背景の絵画的な特徴を通して、アニメーション美術としての同氏が成し遂げた仕事について考えます。
第4回
2月 4日
19時00分〜20時30分 三鷹ネットワーク大学 鈴木 勝雄 高畑勲アニメーションの背景画と美術史
 アニメーションにおける背景画を「美術」と呼ぶ歴史は、実写映画における「美術」に由来するものと考えられますが、今回の講座では、講師の専門領域である「美術史」からアニメーションの背景画に接近します。美術をこよなく愛し、つねに絵画を参照しながらアニメーションの表現スタイルを更新していった高畑勲監督の仕事を手掛かりにすることで、背景美術の「美術」たる要素に注目しつつ、その魅力と表現の可能性を絵画史の側から明らかにします。

講師

伊藤 望(いとう のぞむ) 三鷹の森ジブリ美術館 学芸員
 多摩美術大学美術学部卒業。1998年スタジオジブリにアニメーターとして入社。「ホーホケキョ となりの山田くん」「千と千尋の神隠し」などに参加。2015年より三鷹の森ジブリ美術館学芸に配属、以降ジブリ作品の収蔵、保存を担当。
小林 七郎(こばやし しちろう) アニメーション美術監督、小林プロダクション元代表取締役
 1932年、北海道生まれ。小学校の教員を経て、1964年10月に東映動画(現東映アニメーション)に入社。1968年には小林プロダクションを設立し、数多くのアニメ作品において美術監督を歴任、美術背景を手掛けた。小林プロでは指導者として優れた美術監督を多数輩出した。代表作に「ガンバの冒険」「宝島」「あしたのジョー2」「うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー」「ルパン三世 カリオストロの城」「少女革命ウテナ」「のだめカンタービレ」など。
野崎 透(のざき とおる) 脚本家、日本大学芸術学部映画学科講師
 脚本家、編集者、小説家、日本大学芸術学部映画学科講師。主な仕事は、「母をたずねて三千里」(ムック、DVDボックス・ブックレット)「赤毛のアン」(ムック)、「時をかける少女アートブック」、「おおかみこどもの雨と雪 アートブック」、「風立ちぬ アートブック」、「井岡雅宏画集」(美術集)、「小林七郎画集」(美術集)等(以上、編集)、「ガサラキ」「ウィッチハンター・ロビン」「火の鳥」「ヤングブラックジャック」等(以上、脚本)、「龍が棲む湖」「ガサラキ」「アルジェント・ソーマ」「デッドポイント」(共著)「ダイバージェンス・イヴ」等(以上、小説)。
鈴木 勝雄(すずき かつお) 東京国立近代美術館 主任研究員
 東京大学大学院博士課程修了(美術史)。1998年より現職。専門は日本および西洋の近代美術。同館での企画展に「沖縄・プリズム1872-2008」(2008年)や「実験場1950s」(2012年)、「アジアにめざめたら:アートが変わる、世界が変わる1960‐1990年代」(2018年)などがある。2019年には、「高畑勲展─日本のアニメーションにのこしたもの」を企画。近年の論考としては、「コメモレイションの行方:戦争の記憶と美術館」〔成田龍一・吉田裕編『岩波講座アジア・太平洋戦争 戦後篇 記憶と認識の中のアジア・太平洋戦争』(岩波書店、2015年)〕や、「タブローの行方─一九五〇年代後半の美術の分岐点」〔鳥羽耕史・山本直樹編『転形期のメディオロジー─一九五〇年代日本の芸術とメディアの再編成』(森話社、2019年)〕など。

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