小野:それでは、質問カードでご質問をお受けしたいと思います。まずは、梅本智文さんに質問です。「最も興味のある天体は何ですか?」
梅本:オリオン大星雲ですかね。私は「星がどのようにして生まれるのか」ということを電波望遠鏡を使って研究しているんですけれども、オリオン大星雲というのは、星の生まれているところを研究するには最も大事な天体です。今日は天気悪いですが、晴れていれば、ちょうど今、オリオン座がよく見えていると思います。
小野:お2人に質問です。「天文学的に、最も思い出に残っているできごとは何ですか?」
マダム:私は・・・「M-Vロケット1号機の打ち上げ」ですね。M-Vロケット1号機で、主人が運用メンバーだった電波天文衛星「はるか」を打ち上げたんですけれども、そのロケットの打ち上げが成功するまでプロポーズをしてもらえなかったんですね。(爆笑)ですから、「これがもし、成功しなかったら結婚できないかもしれない」と、固唾を呑んで見守っていました。(あっはっはっはっはー、と大爆笑:渡部)
小野:もちろん、順調に成功したわけですね。
マダム:(頷く。場内、笑いがなかなか収まらず。)
小野:梅本真由美さんへのご質問です。「天文学者とご結婚されて、一番驚いたのはどういうことですか?」
マダム:驚いたことは、頭脳労働だと思っていたのが、意外にも肉体的にハードなお仕事だったということですね。
梅本:肉体的にも・・・(笑)
マダム:あ、そうですね。決してどちらか一方というわけではなくて、頭脳と両方必要、ということですが。
小野:次の質問です。「だんな様は家では、何をして過ごしていらっしゃるのですか?天文学者らしさを出されているのでしょうか?」
マダム:(梅本氏に)いいですか〜?言っても。(笑)
梅本:(ヒヤヒヤしながら)マダムのホームページに書いてあるよね?
マダム:今日は子どもたちが来ているので・・・(子どもに)パパはいつもお家で何をしているかな?
渡部:お嬢ちゃんたち、正直に答えたほうがいいよ〜?(笑)
お嬢さん:パソコン打ったり、ゴロゴロしたりしています・・・
マダム:家に帰ってくると、まず天文の話はしないですね。たまに夜通し飲んだり(!)するときには仕事の話も聞いたりするんですけれども、専門的なことは聞いても私、わからないですし、一緒にお酒を飲むくらいしかできないんですけど、家ではとにかく寛いで、ゴロゴロしていますよ。あと、意外なことに、もっ・・・のすごく、くだらないバラエティ番組を見るんですよね。(笑)
梅本:(笑いながら、ハンカチでひたすら汗を拭く)
マダム:なんでこんなにくだらないのを見るんだろうと思うんですが、夫だけじゃなかったんですよ!他の、ものすごく頭脳労働なさっている、コンピューティングの設計なさっている方が、同じだったんですね。その方に聞いたところによると、日頃はものすごく頭を使って疲れるので、とにかく、信じられないくらいばかばかしいものを見て寛ぎたいんだ、とおっしゃっていました。(笑)
小野:ちなみにどういう番組を・・・?
梅本:あの・・・○○○○(※伏せ字にしておきます)を・・・あ、知ってます?NHKでやっていたやつです。
小野:あまり寛げるタイプの番組には、私には思えないんですけれども・・・
梅本:「ミスタービーン」とかと同系統のやつですね。
小野:はい・・・では最後にもう1つ。「天文台マダム日記に出ていた梅本先生の『数学は自然と会話するための言葉なんだよ』という言葉に感動しました。この言葉に関する思いをそれぞれ、お聞かせください。」
マダム:私も感動しました!!ものすごく感動しました。それで、その言葉を聞いた時に、あぁもっと早く、中学生くらいの時に、この言葉に出会っていれば、こんなにも数学嫌いにならずに済んだのにな〜と・・・(笑)。
梅本:この言葉は、学生時代に家庭教師をしていた時に、教え子に言った言葉なんですが、自分自身、もともとは星が好きで、いわゆるアマチュアあがりで・・・でも天文学者になろうと思ったときに、星を見るだけでは天文学者になれない、数学や物理をきちんとやらないと天文学者にはなれないんだということに気がつきました。その気持ちが、こういう言葉になった、ということです。
(梅本氏の穏やかな語りに、場内しみじみとした雰囲気になる。)
小野:どうもありがとうございました。お二人にあらためて拍手をお願いいたします。(拍手) |